最終更新日:2026年9月30日
俳句の作り方は、「季語を1つ入れて、五・七・五の17音にまとめる」だけです。切れ字は必ずしも必要ではなく、字余りも気にしなくてかまいません。日本伝統俳句協会や松山市の「俳句ポスト365」も、初心者に示す約束はこの2つだけだと案内しています。
つまずきやすいのは、季語の「季節」が今の暦とずれている点です。歳時記の季節は立春・立夏・立秋・立冬で区切るため、真夏に咲く朝顔も、夏の果物の西瓜も「秋の季語」になります。夏休みの宿題で朝顔を詠んで「季節が違う」と言われた経験はありませんか。
こちらの記事では、初心者向けの作り方を3ステップで整理したうえで、季語・切れ字・字余りの基本、そして芭蕉・蕪村・一茶・子規から昭和の俳人まで、春夏秋冬の有名な俳句40句を作者・季語・意味つきで紹介します。句の本文は芭蕉DB(山梨県立大学)や松山市立子規記念博物館のデータなど、作者ごとの底本にあたって確認しました。
こちらの記事では、
- 俳句の作り方は3ステップ|季語を1つ入れて五・七・五にする
- 季語の季節・切れ字・字余りの基本ルール
- 春の有名な俳句10選(作者・季語・意味)
- 夏の有名な俳句10選
- 秋の有名な俳句10選
- 冬の有名な俳句10選
についてご紹介します。
・俳句の約束は「季語を1つ」「五・七・五の17音」の2つだけ。切れ字は必須ではない
・作り方は①12音の「俳句のタネ」を作る → ②5音の季語を選ぶ → ③組み合わせて一行で書く
・季語の季節は立春(2月4日ごろ)・立夏・立秋(8月7日ごろ)・立冬で区切る。朝顔・西瓜・七夕は秋の季語
・「や」「かな」「けり」の切れ字は一句に一つまで。「楽しい」「きれい」などの感情語は書かずに季語に託す
・有名な句は春夏秋冬10句ずつ、本文で作者・季語・意味を紹介
俳句の作り方は3ステップ|季語を1つ入れて五・七・五にする
俳句とは「五・七・五の3句17音を定型とする短詩で、季語を入れることを原則とする」ものです(デジタル大辞泉)。約束はこの2つで、あとは自由に作ってかまいません。日本伝統俳句協会の入門講座も、初心者に伝える約束を「五・七・五の17音で作る」「季節の言葉(季語)を入れる」の2点にしぼっています。
ルールは2つだけ。切れ字は必須ではない
| 約束 | 内容 | 補足 |
|---|---|---|
| 五・七・五 | 17音にまとめる。数えるのは文字数ではなく「音」 | 多少の字余り・字足らずは許容される。初心者はまず定型を目指す |
| 季語を1つ | 季節を表す言葉を1つ入れる | 2つ以上は「季重なり」として避けるのが基本。ただし禁止ではない |
| 切れ字 | 「や」「かな」「けり」など、句を切って余韻を生む言葉 | 必須ではない。使うなら一句に一つまで |
旧来の解説では「切れ字を含める」を約束に数えるものもありますが、日本伝統俳句協会は「『切れ』とは句の内容の問題であり、必ずしも切字にこだわる必要はありません」としています。切れ字は道具の一つと考えて差し支えありません。
音の数え方|「っ」「ー」は1音、「きゃ」は全体で1音
俳句は「十七文字」ではなく「十七音」です。ひらがなにしたときの文字数と音数がずれる言葉があるので、次の表で確認してください。
| 種類 | 数え方 | 例 |
|---|---|---|
| 拗音(小さい ゃ・ゅ・ょ) | 直前の字と合わせて1音 | 「きょ」「ちゅ」「しゃ」は1音。「兄弟(きょうだい)」は4音 |
| 促音(小さい っ) | 1音 | 「ロケット」は4音 |
| 長音(ー) | 1音 | 「ボール」は3音 |
| 撥音(ん) | 1音 | 「みかん」は3音 |
| 組み合わせ | 上記の合計 | 「チューリップ」はチュ・ー・リ・ッ・プで5音。「パイナップル」は6音 |
3ステップで作る|12音の「タネ」に5音の季語を足す
松山市が運営する「俳句ポスト365」は、季語が5音を占めることが多いため、残りの12音(5音+7音、または7音+5音)を「俳句のタネ」と呼んで、ここから作ることを勧めています。俳人の夏井いつきさんが各所で紹介している手順も同じです。
1.12音の「俳句のタネ」を作る。季語を含まない、日常のつぶやきでよい(例:「弟の靴がまた片方ない」)
2.5音の季語を歳時記から選ぶ。タネと直接つながらない季語のほうが、句に広がりが出る(例:「夏休み」「秋の暮」「初時雨」)
3.季語をタネの前か後ろに置き、五・七・五を空けずに一行で書く。声に出して、音の切れ目と意味の切れ目が合っているか確かめる
「感動してから作る」必要はありません。夏井さんは、俳句を作るために先に感動する必要はなく、タネと季語を「取り合わせる」だけで一句になると説明しています。まずは数を作ってみるのが上達の近道です。
「取り合わせ」と「一物仕立て」|初心者は取り合わせから
| 型 | 作り方 | 向いている方 |
|---|---|---|
| 取り合わせ | 季語と、それとは関係のない「俳句のタネ」を組み合わせる。二つの距離は近すぎるより離れているほうがよい | 初心者。3ステップの手順そのもの |
| 一物仕立て | 季語そのもの(一物)だけを17音で詠む | 観察眼に自信のある方。平凡になりやすく、純粋な一物仕立ては全体の3〜4%といわれる |
初心者がやりがちな失敗4つ
| 失敗 | なぜ避けるか | 直し方 |
|---|---|---|
| 感情語を直接書く | 「楽しい」「悲しい」「きれい」と書くと結論ありきの句になる。俳人の片山由美子さんは「『悲しい』と言わないでかなしみを表すのが俳句」と述べている | 感情は季語と情景に託す |
| 説明しすぎる | 17音に理由や経緯まで詰め込むと散文になる | 場面をどこか一つにしぼる |
| 季重なり | 季語が2つあると、どちらが主役か分からなくなる | 季語は1つ。もう一方は季節を持たない言葉に置き換える |
| 三段切れ | 五・七・五がそれぞれ独立して3つに切れると、リズムが途切れる | 切れは一句に一か所。切れ字も一つまで |
季語の季節・切れ字・字余りの基本ルール
作り方で最も混乱しやすいのが「季語の季節」です。歳時記の季節は現代の暦とも旧暦の月ともずれています。
季語の季節は立春・立夏・立秋・立冬で区切る
歳時記では、季節を二十四節気の「四立(しりゅう)」で区切ります。春は立春から立夏の前日まで、夏は立夏から立秋の前日まで、秋は立秋から立冬の前日まで、冬は立冬から立春の前日までです。これに「新年」を加えた5つの部立てで季語が整理されています。
| 季節 | 歳時記の区切り | 2026年 | 2027年 | 旧暦のおよその月 |
|---|---|---|---|---|
| 春 | 立春〜立夏の前日 | 2月4日〜5月4日 | 2月4日〜5月5日 | 1〜3月 |
| 夏 | 立夏〜立秋の前日 | 5月5日〜8月6日 | 5月6日〜8月7日 | 4〜6月 |
| 秋 | 立秋〜立冬の前日 | 8月7日〜11月6日 | 8月8日〜11月7日 | 7〜9月 |
| 冬 | 立冬〜立春の前日 | 11月7日〜2027年2月3日 | 11月8日〜翌年の立春前日 | 10〜12月 |
| 新年 | 正月の事物 | − | − | − |
二十四節気の日付は国立天文台の暦要項によるもので、年ごとに1日前後ずれます。8月上旬の立秋を過ぎれば、暑さの盛りでも歳時記のうえでは秋です。旧暦の1〜3月を春とする古い区分が元になっているため、現代の感覚より1か月ほど早く季節が進むと覚えておくと迷いません。
季節を間違えやすい季語一覧
| 季語 | 歳時記の季節 | 理由・補足 |
|---|---|---|
| 西瓜(すいか) | 秋(初秋) | 旧暦の7月に出回ったため。主要な歳時記では今も秋に分類されている |
| 朝顔 | 秋(初秋) | 立秋以降に盛りを迎えるため。千代女の「朝顔に釣瓶とられてもらひ水」も秋の句 |
| 七夕・天の川 | 秋(初秋) | 旧暦7月7日の行事のため |
| 月 | 秋(三秋) | ただ「月」といえば秋の月。秋から冬にかけて空が澄み、月が明るく大きく照るため |
| 花 | 春(晩春) | ただ「花」といえば桜のこと |
| 蛍 | 夏(仲夏) | 6月ごろに飛ぶため、こちらは感覚どおり |
| 雪 | 冬(晩冬) | 「雪見」「雪の深さ」も冬 |
| 夏休み | 夏 | 8月後半は暦のうえで秋だが、季語としては夏に分類される |
切れ字は「や」「かな」「けり」|一句に一つまで
切れ字とは「句中または句末に用いて、句に曲折をもたせたり、特別に言い切る働きをしたりする語」です(デジタル大辞泉)。日本伝統俳句協会は、切れ字が「句に空間をもたらし、詠嘆や感動をより深くさせる」「余韻余情を生み、韻律やリズムを整える」と説明しています。伝統的には「切れ字十八字」(や・かな・けり・もがな・し・じ・か・らむ・つ・ぞ・よ・せ・ず・れ・ぬ・へ・け・いかに)が知られますが、現代の俳句で主に使われるのは次の3つです。
| 切れ字 | よく置かれる位置 | 例句(作者) |
|---|---|---|
| や | 上五の末尾が多い | 古池や蛙飛込む水のおと(松尾芭蕉)/我と来て遊べや親のない雀(小林一茶) |
| かな | 句の最後 | しばらくは花の上なる月夜かな(松尾芭蕉) |
| けり | 句の最後 | 桐一葉日当りながら落ちにけり(高浜虚子) |
「古池や」は古池に感じ入る気持ちを「や」で強く切り、そのあとに蛙の水音を置いています。一茶の「遊べや」は雀への呼びかけです。切れ字は一句に一つが原則で、二つ使うと三段切れになりやすくなります。
字余り・字足らず・無季俳句はどう扱う?
| 用語 | 意味 | 初心者の扱い |
|---|---|---|
| 字余り | 定まった音数より多い句。芭蕉の「旅に病で夢は枯野をかけ廻る」は中七が8音 | まずは定型を守る。夏井いつきさんも「切れ字や字余りはテクニックの問題なので、気にしなくて大丈夫」としている |
| 字足らず | 5音または7音より少ない句 | 同上 |
| 季重なり | 一句に季語が2つ以上入ること。「一方が主であることが明らかなときなどを除いて、通常これを嫌う」(デジタル大辞泉) | 避けるのが基本。ただし一茶の「蟻の道雲の峰よりつゞきけん」のように、両方が夏で主従がはっきりしていれば成立する |
| 無季俳句 | 季語・季感を持たない俳句。大正の新傾向俳句や戦後の前衛俳句に例がある | 何を俳句とみなすかは団体によって立場が異なる。初心者は季語を入れる |
春の有名な俳句10選(作者・季語・意味)
春の季語は立春(2月4日ごろ)から立夏の前日までの言葉です。まだ寒さの残る梅の句から、桜の散る「行く春」まで幅があります。句の表記は、作者の句集や記念館の底本に合わせています。
・作者:服部嵐雪(はっとり らんせつ)
・季語:梅(春)
・意味:梅が一輪、また一輪と開くたびに、その一輪ぶんずつ暖かさが増していくように感じられる。嵐雪は芭蕉の高弟で、句集『玄峰集』に収められています。前書に「寒梅」とあることから冬の句とする見方もあります。
・作者:松尾芭蕉
・季語:梅(春)
・意味:梅の香りが漂う山道に、朝日が「のっと」顔を出した。元禄7年(1694年)、芭蕉最晩年の句集『炭俵』の巻頭を飾る句で、飾らない「軽み」の代表作とされています。
・作者:松尾芭蕉
・季語:鶯(春)
・意味:鶯の姿が柳の後ろ、薮の前とせわしなく移っていく。居場所を言うだけで春の明るい景色を立ち上げた句で、『続猿蓑』に収められています。
・作者:与謝蕪村
・季語:春の海(春)
・意味:春の海は一日じゅう(ひねもす)、のたりのたりと波がゆるやかに寄せては返している。繰り返しの音が春の眠気まで伝えてきます。『蕪村句集』所収。故郷の丹後の海を詠んだという伝承がありますが、句会の題詠とする研究もあります。
・作者:与謝蕪村
・季語:菜の花(春)
・意味:一面の菜の花畑。東の空には月が昇り、西の空には夕日が沈もうとしている。画家でもあった蕪村らしい、大きな構図の句です。『蕪村句集』に前書「春景」で収められています。
・作者:小林一茶
・季語:雀の子(春)
・意味:雀の子よ、そこをどきなさい、お馬が通るよ。小さな命に声をかける一茶らしい句で、文政2年(1819年)の俳文集『おらが春』に収められています。
・作者:正岡子規
・季語:春(春)
・意味:春だなあ。ここは昔、十五万石の城下町だった。明治28年(1895年)、故郷・松山の春に藩政時代を偲んだ句で、JR松山駅前に句碑があります。「十五万石」は松山藩の石高です。
・作者:夏目漱石
・季語:菫(春)
・意味:菫の花ほどの、小さくつつましい人に生まれたいものだ。明治30年(1897年)、熊本時代の漱石が正岡子規に送った句のひとつです。
・作者:芥川龍之介
・季語:白桃(春)
・意味:白桃の蕾がふくらんで、枝がしなやかに反っている。「莟うるめる」は蕾が潤みふくらむ様子です。大正期の句で、書斎の壺に挿した枝を詠んだと前書にあります。
・作者:松尾芭蕉
・季語:行く春(晩春)
・意味:春が過ぎていく。鳥は鳴き、魚の目にも涙が浮かんでいるようだ。元禄2年(1689年)3月27日、『おくのほそ道』の旅に出る千住で詠んだ「矢立の初め」の句で、見送りの人々との別れの情を春の終わりに重ねています。
夏の有名な俳句10選(作者・季語・意味)
夏の季語は立夏(5月5日ごろ)から立秋の前日までの言葉です。芭蕉の『おくのほそ道』の名句が集中する季節でもあります。
・作者:松尾芭蕉
・季語:夏草(夏)
・意味:夏草が生い茂るこの地は、かつて武士たちが功名を夢見て戦った跡なのだ。元禄2年(1689年)5月13日、『おくのほそ道』の平泉・高館で詠まれました。「夢の中」と誤って引かれることがありますが、正しくは「夢の跡」です。
・作者:松尾芭蕉
・季語:蝉(夏)
・意味:あたりは静まり返り、蝉の声だけが岩にしみ込んでいくようだ。元禄2年(1689年)5月27日、山形の立石寺(山寺)での句です。初案は「山寺や石にしみつく蝉の聲」で、推敲を重ねて今の形になりました。
・作者:松尾芭蕉
・季語:五月雨(夏)
・意味:五月雨(梅雨の雨)を集めた最上川の流れが、なんと速いことか。元禄2年(1689年)5月29日、大石田での句です。初案は「集て涼し」で、川下りの実感から「早し」に改められました。
・作者:松尾芭蕉
・季語:青葉若葉(夏)
・意味:ああ尊い。青葉若葉に降りそそぐ日の光よ。『おくのほそ道』の日光の章の句で、「日の光」に地名の日光を掛けたと読まれています。
・作者:与謝蕪村
・季語:五月雨(夏)
・意味:降り続く五月雨で水かさを増した大河を前に、家が二軒、心細く建っている。『蕪村句集』所収。芭蕉の最上川の句と読み比べると、蕪村の絵画的な構図がよく分かります。
・作者:山崎宗鑑(伝)
・季語:団扇(夏)
・意味:あの丸い月に柄を差したら、さぞよい団扇になるだろう。室町時代の俳諧の祖とされる宗鑑が編んだ『新撰犬筑波集』に収められ、宗鑑の句として伝わっています。
・作者:小林一茶
・季語:蟻・雲の峰(夏)
・意味:どこまでも続く蟻の行列は、あの入道雲(雲の峰)から続いてきたのだろうか。『おらが春』所収。季語が2つある「季重なり」ですが、どちらも夏で主従がはっきりしている例です。
・作者:正岡子規
・季語:夏嵐(夏)
・意味:夏の強い風が吹き込んで、机の上の白い紙をすっかり飛ばしてしまった。明治29年(1896年)の句で、病床にあった子規の目に映った一瞬の動きです。
・作者:芥川龍之介
・季語:青蛙(夏)
・意味:つやつやと光る青蛙よ、おまえもペンキを塗りたてなのか。大正7年(1918年)の句で、『ホトトギス』に「我鬼」の名で発表されました。ルナール『博物誌』の一節を踏まえるとされます。
・作者:杉田久女(すぎた ひさじょ)
・季語:ほととぎす(夏)
・意味:山にこだまを響かせて、山ほととぎすが思うままに鳴いている。昭和6年(1931年)の「日本新名勝俳句」で金賞に選ばれた句で、没後の昭和27年(1952年)に刊行された『杉田久女句集』に収められています。
秋の有名な俳句10選(作者・季語・意味)
秋の季語は立秋(8月7日ごろ)から立冬の前日までの言葉です。朝顔や露、月など、季節を間違えやすい季語が多いのも秋の特徴です。
・作者:加賀千代女(かがのちよじょ)
・季語:朝顔(秋)
・意味:井戸の釣瓶に朝顔の蔓が巻きついてしまった。花を切るのが忍びなくて、隣に水をもらいに行った。朝顔は秋の季語です。千代女は後に「朝顔や」と推敲しており、出身地の石川県白山市は「や」の形を紹介しています。
・作者:与謝蕪村
・季語:白露(秋)
・意味:朝の白露が、茨の棘の一本一本にひとつずつ宿っている。『蕪村句集』所収。小さなものに目を凝らした写生の句です。
・作者:与謝蕪村
・季語:踊(秋)
・意味:盆踊りも終わり近く、残って踊る四、五人の上に月が沈みかけている。季語は「踊」(盆踊り)で初秋。月ではない点に注意が必要です。『蕪村句集』所収。
・作者:正岡子規
・季語:柿(秋)
・意味:柿を食べていると、法隆寺の鐘が鳴り響いてきた。明治28年(1895年)、奈良を旅した折の句で、前書に「法隆寺の茶店に憩ひて」とあります。日本で最もよく知られた俳句のひとつです。
・作者:夏目漱石
・季語:赤蜻蛉(秋)
・意味:肩にとまった赤とんぼが、人恋しげに見える。明治43年(1910年)10月、修善寺で大病を患った漱石が回復期に日記に書きとめた句です。
・作者:小林一茶
・季語:露(秋)
・意味:この世が露のようにはかないことは分かっている。分かってはいるが、それでもあきらめきれない。文政2年(1819年)、幼い長女さとを亡くしたときの句で、『おらが春』に収められています。
・作者:小林一茶
・季語:秋風(秋)
・意味:秋風に揺れる赤い花は、あの子がむしりたがっていた花だ。『おらが春』で前の句に続けて置かれ、前書に「さと卅五日 墓」(長女さとの三十五日の墓参り)とあります。
・作者:松尾芭蕉
・季語:秋深し(秋)
・意味:秋が深まった。隣の家の人は、いったい何をして暮らしている人なのだろう。元禄7年(1694年)9月28日、大坂で病床にあった芭蕉が翌日の句会に書き送った句で、起き上がって作った最後の句とされています。
・作者:飯田蛇笏(いいだ だこつ)
・季語:芋の露(秋)
・意味:里芋の葉に露が置き、遠くに連なる山々が居住まいを正すように姿を見せている。大正3年(1914年)の作で『ホトトギス』の巻頭を飾り、昭和7年(1932年)刊の句集『山廬集』に収められています。
・作者:原石鼎(はら せきてい)
・季語:秋風(秋)
・意味:秋風が吹くなか、模様の違う皿が二枚並んでいる。昭和12年(1937年)刊の句集『花影』に収められています。
冬の有名な俳句10選(作者・季語・意味)
冬の季語は立冬(11月7日ごろ)から立春の前日までの言葉です。枯野・木枯らし・雪など、厳しさのなかに温もりを見つける句が並びます。冬の季語を時期や分類から探したい方は、次の記事で342語を一覧にしています。
11月上旬は秋、2月4日からは春の季語。正月は冬でなく新年。紅葉は秋、椿は春など迷う語も判定
・作者:夏目漱石
・季語:凩(冬)
・意味:木枯らしが、夕日を海へ吹き落としてしまうかのように吹き荒れている。明治29年(1896年)12月、熊本時代の漱石が正岡子規に送った句です。
・作者:野沢凡兆(のざわ ぼんちょう)
・季語:雪(冬)
・意味:京都の下京の町に降り積もった雪の上に、夜の雨が降っている。元禄4年(1691年)刊の『猿蓑』に収められた句で、『去来抄』によると、芭蕉や門人たちが上五をあれこれ考え、最後に芭蕉が「下京や」に決めました。
・作者:与謝蕪村
・季語:寒月(冬)
・意味:冴えた冬の月の下、門のない寺の上に空が高く広がっている。『蕪村句集』所収。「天高し」は秋の季語ですが、切れ字「や」の付く「寒月」が主の季語です。
・作者:与謝蕪村
・季語:冬木立(冬)
・意味:枯れたように見える冬の木に斧を入れると、生きた木の香りが立ちのぼって驚いた。『蕪村句集』所収。
・作者:高浜虚子
・季語:枯野(冬)
・意味:目の前の枯野は日陰なのに、遠くの山には日が当たっている。明治33年(1900年)の作で、虚子が最も好んで揮毫した代表句です。松山市の東雲神社に句碑があります。
・作者:村上鬼城(むらかみ きじょう)
・季語:冬蜂(冬)
・意味:冬になって飛ぶ力を失った蜂が、死に場所も見つけられずに歩いている。高崎に住み、聴覚の障害と貧しさのなかで境涯句を詠んだ鬼城の代表作です。
・作者:松本たかし(まつもと たかし)
・季語:焚火(冬)
・意味:焚火にあたっているうちに、気づけば背後はとっぷりと暮れていた。昭和10年(1935年)刊の『松本たかし句集』に収められています。
・作者:正岡子規
・季語:雪(冬)
・意味:雪がどれくらい積もったか、何度も何度も家の者に尋ねた。明治29年(1896年)、病床で外に出られない子規の句です。
・作者:松尾芭蕉
・季語:雪見(冬)
・意味:さあ出かけよう、雪見に。転ぶところまで行こうではないか。貞享4年(1687年)12月、名古屋の門人宅での雪見の席の句で、『笈の小文』では「いざ行む」と表記されています。
・作者:松尾芭蕉
・季語:枯野(冬)
・意味:旅の途中で病に倒れたが、夢のなかでは枯野を駆けめぐっている。元禄7年(1694年)10月8日の深夜、大坂の宿で門人に墨を磨らせて詠んだ句で、前書は「病中吟」。芭蕉の生前最後の句です。「旅に病んで」と読みます。
俳句の作り方についてよくある質問
辞書の定義では「季語を入れることを原則とする」です。季語のない「無季俳句」も存在しますが、何を俳句とみなすかは俳句の団体によって立場が分かれます。初心者のうちは季語を1つ入れる形で作るのが確実です。
「季重なり」といい、一方が主であることが明らかな場合を除いて避けるのが通例です。禁止ではありませんが、初心者は避けたほうが句がまとまります。一茶の「蟻の道雲の峰よりつゞきけん」のように、名句にも季重なりはあります。
必須ではありません。日本伝統俳句協会は「必ずしも切字にこだわる必要はありません」としています。使う場合は「や」「かな」「けり」のいずれか一つを一句に一つまでにします。
促音「っ」と長音「ー」、撥音「ん」はそれぞれ1音です。拗音の「きゃ」「しゅ」「ちょ」は直前の字と合わせて1音に数えます。「チューリップ」は5音、「パイナップル」は6音です。
歳時記の季節は立秋(8月7日ごろ)から秋に変わるためです。朝顔・西瓜・七夕・天の川はいずれも秋の季語です。夏休みの宿題で朝顔を詠むと、暦のうえでは秋の句になります。
初心者はまず定型を目指すのが上達の近道ですが、多少の字余り・字足らずは名句にも見られます。夏井いつきさんは「切れ字や字余りはテクニックの問題なので、気にしなくて大丈夫」としています。声に出して読んで、リズムが崩れていなければ問題ありません。
松山市が運営する「俳句ポスト365」は、月ごとの兼題(お題)に初心者用フォームから何度でも投句でき、選者による講評が公開されます。松山市内などに設置された実物の「俳句ポスト」に直接投函する方法もあります。伊藤園の「お〜いお茶新俳句大賞」は例年11月3日から翌年2月末まで作品を募集しています。応募要項は各公式サイトで最新のものを確認してください。
俳句は、複数人で長句と短句を詠み継ぐ連歌・俳諧の最初の句「発句」が独立したものです。「俳句」という呼び名は、明治時代に正岡子規が発句だけを指す言葉として使ってから一般化しました。子規は写生を唱えて俳句と短歌を革新し、高浜虚子らを育てました。
まとめ
俳句の作り方の基本と、春夏秋冬の有名な俳句を紹介しました。
- 俳句の約束は「季語を1つ」「五・七・五の17音」の2つ。切れ字は必須ではない
- 作り方は、12音の「俳句のタネ」を作り、5音の季語を選んで組み合わせる3ステップ
- 「っ」「ー」「ん」は1音、「きゃ」などの拗音は全体で1音と数える
- 季語の季節は立春・立夏・立秋・立冬で区切る。朝顔・西瓜・七夕・月は秋、花は春
- 切れ字は「や」「かな」「けり」を一句に一つまで。感情語は書かずに季語に託す
- 季重なり・三段切れ・説明しすぎは初心者が陥りやすい失敗
- 有名な句は春夏秋冬10句ずつ。芭蕉の「夢の跡」など、引用の誤りにも注意
上手に作ろうと構える必要はありません。日常のつぶやきを12音にして、歳時記から季語を一つ添える。それだけで、今日の景色が一句になります。
参考:日本伝統俳句協会「俳句入門講座-1」/同「俳句入門講座-2」(切字十八字)/俳句ポスト365「初めての方へ」(松山市)/Koubo「夏井いつき直伝!初心者でも必ず一句詠める俳句の作りかた完全ガイド」/俳句大学 ハイクロペディア「音数」/同「感情語」/コトバンク「俳句」/同「切れ字」/同「季重なり」/ジャパンナレッジ『日本の歳時記』凡例/国立天文台 令和8年(2026)暦要項/同 令和9年(2027)暦要項/きごさい歳時記(西瓜・朝顔・月・花・蛍・雪・時鳥・秋風の各項、季語別「芭蕉全句集」「蕪村句集」)/芭蕉DB(山梨県立大学 伊藤洋)/松山市オープンデータ「正岡子規の俳句」/松山市立子規記念博物館「俳句の里 松山」/長野郷土史研究会『一茶発句全集』/白山市「加賀の千代女」/国立国会図書館「近代日本人の肖像 正岡子規」/コトバンク「杉田久女」/同「飯田蛇笏」/同「原石鼎」/芭蕉DB「猿蓑集 巻之一」/青空文庫『松本たかし句集』/同志社女子大学 教員コラム「下京や雪積む上の夜の雨」(去来抄)/コトバンク「芋の露」
※二十四節気の日付は年により1日前後ずれます。句の表記は作者の句集・記念館の底本に合わせており、教科書などでは現代仮名遣いに直されていることがあります。2026年9月時点の情報です。






